ひつじとハンモック

=30代OLひとりぐらしの日常=

影がある分だけ、光は強く濃くなる(映画「そこのみにて光輝く」感想)

映画「そこのみにて光輝く」を観ました。

 

登場人物全員が大きな苦しみを抱えていて、出口のない迷路を彷徨うばかりで、
佐藤(綾野剛さん)との出会いで、救われていく千夏(池脇千鶴さん)と拓児(菅田将暉さん)だったけれど、「好きだから一緒にいる」というシンプルな答えにすらたどり着けない、たどり着くことを許されなくて、観ていてとても辛かったです。


寝たきりの父親を助けるため、仮釈放の弟を守るため、生活のために体を売る千夏。現実逃避しなければ自分を守れないところまできてしまった千夏の母親。なんとか家族を助けたい拓児。

一番の悪人として登場してくる、妻子もちなのに千夏を愛人にして離さない男・中島(高橋和也さん)すら、家族を大事にしているが故に壊れていき、その救いとして彼女を求めている現状。誰も悪くない、でも状況は良くならない。

 

最後に拓児と千夏がしたことは、今の日本で実際に起きていることだと思う。
報道されているものもあるし、されていないものもたくさんあるだろう。
自分だっていつこういう状況になるかわからない。

 

苦しい時代。だけど、そこを救ってくれるのは、いつだって大切な人なんだと思う。

千夏にとっては佐藤だった。拓児にとっては千夏であり佐藤だった。
佐藤だって、絶望から抜け出せたのは千夏に出会えたからだった。


真っ暗な世界。だけど、大切な人といるその時間だけは、光り輝くのだと思う。
その人の持つ影が濃ければ濃いほど、暗闇が深ければ深いほど、
照らす光は強くなるのだと。

 

あのラストシーンをみて、その光の美しさに救われた。

 

きっとこれからの彼らはまた、過酷な闇に引き戻されていくだろう。
でも、大切な人に出会う前とは違う、毎日になるのではないかと思う。

 

いい映画でした。
予告編にあった海のシーンがいいって友達に言われてて、たしかに海のシーンもよかったけど、やっぱりあのシーンが好きだなぁ。ネタバレになるから書けないけど。

 

 

そこのみにて光輝く 通常版DVD

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